
飲食店歴14年転々として、今バーテンダーを8年やっています。
この記事では、BARでカクテルを作るうえで欠かせない「スピリッツ」についてお話します。
スピリッツとは
蒸留酒の全般を指す名称。
広い意味で言えば、ウイスキー、ブランデーなどもスピリッツに含まれるが、一般的にジン、ウォッカ、ラム、テキーラをスピリッツと呼びます。
この四種類は世界四大スピリッツと呼ばれています。
ジン
大麦麦芽やとうもろこしなど穀物を原料に使い、糖化、発酵、蒸留し、香味成分としてジュニパーベリーや色んなボタニカルを加えて再蒸留したスピリッツ。
ジンの歴史
1660年、オランダで医学部教授が熱病の特効薬を作ろうとして、利尿効果のあるジュニパーベリーをアルコールに浸漬して蒸留した。
しかし医学者の意図に反して、アルコール性飲料として人気がでる。
ジュニパーベリーを意味するフランス語ジュニエーブル(Genievre)からジュネバ(Geneva)と呼ばれ、オランダを代表する酒になった。
その後、オランダ商人の手で世界各地に広がり、特にイギリスでは、英語風にジン(Gin)と呼ばれ大流行した。
1689年にオランダから英国王に迎えられたウイリアム3世の影響もあって、爆発的な人気を得た。
18世紀前半では「ジンの時代」と呼ばれるほど、庶民にも飲まれる事で未成年者や女性も巻き込んだ悲劇も生まれている。
イギリスでは、当初飲みやすくする為に砂糖で甘味を付けたオールドトムジン(Old Tom Gin)が好まれていたが19世紀後半になると連続式蒸留機によるスッキリとした風味のドライジン(Dry Gin)が登場してジュネバを圧倒し、世界的にドライジンが主流になった。
ウォッカ
穀物やジャガイモなどの芋類を糖化、発酵、蒸留し、白樺などの活性炭で濾過し雑味成分を取り除いたクセのないスピリッツ。
ウォッカの歴史
古い呼び名は、ズィズネーニャ・ワダと言う。「生命の水」という意味。
16世紀にワダ(Voda 水)からVodka ウォッカと呼ばれるようになった。
ウォッカの歴史について、詳しい事はわかっていないが、11世紀のポーランドで生まれたという説もある。
1810年薬剤師が、白華の炭の活性作用を発見、これをウォッカの濾過に利用する技術を開発したのは、ピョートル・スミルノフ(ウォッカブランド「スミノフ」の創業者)だと言われている。
独自の濾過技術の確立と、19世紀半ばに蒸留精度の高い連続式蒸留機が登場した事により、酒類のなかで、ひときわピュアな風味のウォッカの個性が固まった。
ウォッカがロシア以外の国でも製造、飲酒されるようになったのは、1917年のロシア革命以後のこと。ロシアから亡命したロシア人は、亡命先の国々でウォッカを製造するようになった。
1933年、禁酒法が廃止されると、アメリカにおいてもウォッカ製造が盛んになり、1939年頃からカリフォルニア州を中心にウォッカをフルーツジュースで割ったロング・ドリンクが飲まれ始めた。
さらに1950年代に入ると、ウォッカの中性的な性格がカクテルベースとして評価され、爆発的なブームになった。
ラム
カリブ海の西インド諸島生まれ。
サトウキビの糖蜜や搾り汁を発酵、蒸留して作られるスピリッツ。
ホワイト、ゴールド、ダークの種類がある。
風味では、ライト、ミディアム、ヘビーがある。
ラムの歴史
サトウキビは1492年、クリストファー・コロンブスの新大陸発見後、南欧のスペインから持ち込まれたと言われる。
18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパ諸国でもラムが飲まれるようになり、特にこの時代、大活躍したイギリス海軍では、水兵への支給品として欠かせない酒だった。
現在もラムには「海の男の酒」といったイメージがある。また、奴隷売買にまつわる三角貿易の重要な商品とされたとこも、事の善悪は別にして、ラムの普及を促す結果になった。
なぜラムという名前かというと諸説あるが、この酒を飲んで酔って興奮(ランバリオン Rumbullion)したことから、頭文字のRum ラムと呼んだという説が広く受け入れられている。
他には砂糖を意味するラテン語のサッカラム(Saccharum)から来たという説もある。
テキーラ
アガベ・アスール・テキラーナ(Agave Azul Tequilana)という竜舌蘭の一種を糖化、発酵、蒸留して作られるメキシコ原産のスピリッツ。
アガベは、マゲイとも呼ばれるヒガンバナ科の常緑多年生草で8〜10年生育した直径70〜80㎝、重さ30〜40Kgの球茎を利用する。
・蒸留してないものをブランコ(シルバー)
・2ヶ月~1年の樽熟成したテキーラをレポサド
・1年~3年の樽熟成したテキーラをアネホ
・3年以上熟成でエクストラ・アネホと言われる。
テキーラの歴史
古代アステカからの伝統的な醸造酒であるプルケが、スペイン人によって蒸留酒とされたメスカルのひとつ。かつてシエラマドレ山脈で山火事があり、その焼け跡で発見された良い匂いを発し甘い樹液を出す焦げた竜舌蘭を起源とするものや、竜舌蘭の幹をかじっているハツカネズミの巣穴を覗くと黄金色の液体が溜まっていて、これを集めて発酵させたものがテキーラの起源と言われる。
名前の由来となったハリスコ州のテキーラ村を中心とした特定地域で栽培したアガベ・アスール・テキラーナを特定地域で蒸留したものに限り、テキーラと称する事ができる。
最初のテキーラ工場は1600年に建てられ、1873年にはヨーロッパへ出荷された記録が残っている。 1893年にシカゴで開かれた鑑評会でテキーラ産のメスカル・ブランデーが受賞し、1910年のサン・アントニオの大会ではテキーラ・ワインの名で受賞した。以後、テキーラの名称が使われるようになり。その後も販売は拡大し1968年のメキシコオリンピックで広く知られるようになった。
2006年、産地は「テキーラの古い産業施設群とリュウゼツランの景観」として世界遺産に登録された。